警察力の導入について

1. これまでに分かっている情報

警察力導入の経緯

19:00~21:00 「総長対話」実施

  • 授業料の値上げに関する「総長対話」が19時から21時ごろまでZoom Webinarを用いて開催されました。
  • 駒場キャンパス・本郷キャンパスでは複数の会場で学生が共に「総長対話」に臨む「パブリックビューイング」が実施されました。東大新聞の報道によれば、本郷キャンパスでは、経済学研究棟や赤門総合教育棟において、それぞれ100名程度を集めて「総長対話」が視聴されていたようです。
  • 「総長対話」は、情報の非対称性や権力勾配の観点など形式論からも不十分であり、かつ学生側から発言できたのは13名で総長も学生の満足のいく回答をすることができず、「総長対話」には不満の声が高まっていました。

    駒場キャンパスでの「総長対話」PV後集会の様子

21:00~ 安田講堂前集会

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  • 「総長対話」終了後、本郷キャンパスでは、学生100名程度が安田講堂前広場に集まり、「総長対話」が十分ではなかったことに抗議する集会が行われました。
  • 集会では、安田講堂から退庁すると思われた総長や他の役員に対して直接陳情するための面会要求がシュプレヒコール等で叫ばれたり、音楽がかけられたようです。
  • 複数の証言から、抗議集会はあくまで非暴力的なものであり、学生と大学職員・警備員との衝突や学生による安田講堂への侵入はこの時点では発生していなかったと見られます。
  • 目撃証言や提供写真から、安田講堂正面玄関前には本部職員1名と警備員2名(途中で1名交代)が待機していたことがわかっています。

安田講堂正面玄関前の本部職員・警備員と座り込みを行う学生

 
  • 集会は安田講堂前広場で実施されていましたが、広場に面する正面玄関とは異なる複数の出入口から役員が退庁しても直接陳情を行えるように、各出入口付近でそれぞれ学生数名が待機していたようです。

    「総長対話」後安田講堂前集会(執行部員撮影)

  • 一部の目撃証言によれば、集会が行われていた22:10頃、安田講堂から正門に至る銀杏並木で警察官2名が目撃され、当該警察官が正門守衛と話していたとのことです。

    正門前に向かう警官(2024年6月21日 22時12分 学生撮影)

  • 現場が膠着状態となったため、抗議集会に参加する学生の数は開始から数十分で10名程度まで減少していたとの証言もあります。

22:30頃 警察力本格導入の原因となった事案の発生?

  • 22:30頃、現場にいた学生が安田講堂付近で異音が聞こえたと証言しています。また、ほぼ同時刻に講堂正面玄関前に待機していた警備員2名に着信があったとの証言も寄せられています。
  • 本会が独自に証言を集めた結果、「学生複数名が講堂内部に進入した」のは確からしいことが判明しました。ただ、進入経路については証言によってばらつきがあります。
  • 怪我の事実について、本会が独自に把握していることはありませんが、毎日新聞は、本富士警察署の話として、「けがとえるのか微妙で、なくとも流血しているとか傷痕があるという状況ではない」と伝えています。
  • 通報の主体について、大学本部はこれを明らかにしていませんが、前掲毎日新聞は「大学関係者」としています。本会執行部員による安田講堂警備室(守衛)への聞き取りでは、守衛が通報をした事実はないとの事実が伝えられたため、安田講堂内にいた大学職員による通報ではないかとの推測がなされています。

22:50頃 警察の本格入構

  • 警察官は、パトカー2台と覆面パトカー1台を伴って、本富士警察署に近い龍岡門から入構し、安田講堂裏手に到達したものとみられます。
  • 入構した警察官は総勢で30名程度にのぼり、中には警杖や盾を装備していた警察官もいたことが判明しています。
  • 警察官は安田講堂正面広場に回り、正面玄関には20~30名が到着したため、抗議集会に参加していた学生の多くは誤認逮捕をおそれて集会を打ち切り現場を離れたようです。
  • 警察官は、安田講堂周辺に展開して、その場に残っていた学生を取り囲み、当時の状況や集会の主催者について詰問したとされています。また、安田講堂正面玄関前にいた警備員に対しては、怪我している箇所がどこか質問するとともに、当該警備員を安田講堂警備員室に連れて行ったようです。(下記写真・動画参照)
  • 一部の目撃証言では、警察官の「どこを殴られたのか」との質問に対して警備員が「どこも殴られていない」と答えていたとのことです。
  • 現場に居合わせた本会執行部員の聞き取りに対して警察官は、「安田講堂前で警備員と抗議運動をしてた人達が揉み合いになって、誰かが警備員を殴ったと通報があったため、入構した」旨の説明をし、この認識に基づいて学生を詰問していたことが分かっています。


安田講堂裏のローソン前を歩く警官隊(学生撮影)

 


安田講堂下で学生を取り囲んで尋問する警察官。右の二人は盾と警杖で武装している(本会執行部員撮影)

安田講堂前で警備員と学生に事情聴取をしつつ、警備員を警備員室に連れていく様子が写っている。警備員に対しては「殴られた場所はどこか」、学生に対しては「何が起こっていたか知っている人はいないか」と尋ねている。(学生提供)

23:55頃~ 警察の退構

23:55頃までにパトカー2台及び多くの制服警察官は、龍岡門から退構しました。その後も覆面パトカー1台及び5名程度のスーツ姿の警察官は安田講堂付近に残り、ほかに「巡査」の腕章をつけた警察官が安田講堂警備室内に入って事情聴取を行っていたものとみられますが、午前2時ごろまでにはそれらの警察官も退構していたようです。

2. 本会の対応

抗議声明の発出

本会理事会は6月23日、「大学本部の警察導入に関する抗議声明」を発出しました。
警察力導入の導入に対する抗議声明

情報収集の実施

本会は、6月23日、警察力の導入について、藤井総長に対して質問状を送付しました。大学本部は翌24日に質問状への回答を本会に対して送付しました。

また、証言フォームを公開して、居合わせた当事者からの証言を募集しました。

大学側からは、6月22日6月25日に見解が公表されました。

再声明の発出

以上のような新たな情報をもとにして、6月27日、本会理事会は警察力導入についての再声明を発表しました。
「警察力導入に対する抗議声明(再声明)」

FAQ

警察力導入を非難しているのは、的外れな「治外法権」を主張しているのと同じではないか?

抗議声明において大学の自治と「治外法権」を混同しているのではないかとのご指摘もありますが、本会は「治外法権」に相当するような、すべての警察入構の否定を主張しているわけではありません。本会が主張する「大学の自治」とは、主に学問の自由、思想の自由を保障するため、学内の問題については学内の構成員によって意思決定を行い、外部からの干渉を排する原則を指します。そのため、思想弾圧に直接的につながりかねない警察力導入は慎重に判断すべきだと考えていますが、これは学内で発生した犯罪行為に対する警察の捜査を否定するものではありません。しかしながら、今回の警察力導入によって、抗議に参加した学生が警察官によって詰問される事態が発生し、結果的に抗議活動が散会したことからも、学生の自由な意思表明が警察力導入によって抑制されかねないことは留意しておく必要があります。

警察力導入の何を批判しているのか?

東大広報課は、安田講堂への学生らの侵入に伴う警備員負傷を理由に大学職員による通報があったと説明しています。しかし、本会は今回の事態は守衛の対応能力を超えるものではなく、複数名の侵入に対して数十名の警察官が入構したことについて、過剰な対応であったと考えています。また、数名の警察官による事情聴取ならまだしも、盾や警杖を持った数十名の警察官が入構したという平常では考えられない事態について、どのように学内で意思決定が行われたのかが重要です。大学側の慣行からして、役員会や教授会などでの慎重な審議なしに行われたのが事実であれば拙速であると言わざるを得ません。

根拠となるような決まりがあるのか?

前述した大学自治の前提の下、1969 年に大学本部と学生との間に締結された「東大確認書」で、「大学当局」が原則として学内の問題を解決する手段として警察力を導入しないことが確認されました。2000年前後の駒場寮廃寮問題でも学部当局による一方的な寮生排除があったものの、警察力導入が一貫して避けられていたように、こと学内問題については後述の「東大確認書」で示された警察力導入に関する原則がこれまで維持されてきたことは明らかです。今回の警察力導入が「東大確認書」に違反すると本会は考えています。

今回の安田講堂への学生の侵入行為についてどのように考えているのか。

本会は今回の安田講堂への侵入事案には関与していません。また、執行部は活動における暴力行為を容認しておらず、今回の侵入・暴力行為についても、広報課の発表が正しいのであれば、非難されるべきだと考えています。ただし、怪我の程度については、全治1週間の打撲という広報課の発表や、本富士警察署の「けがと言えるのか微妙で、少なくとも流血しているとか傷痕があるという状況ではない」という毎日新聞への回答を踏まえれば、怪我が事実であったとしても極めて軽微であり、警察力の導入が必要な事態ではなかったと考えています。守衛が警察力導入の必要性を認めていなかったことは、6月23日の抗議声明で既に述べたとおりです。

学生自治会は共産党系・民青系と関係があるのではないか?

本会の活動や執行部員を指して特定の党派や政治団体に結びつけて語るようなご意見もございますが、学生自治会は2012年に日本共産党系・民青(民主青年同盟)系全学連から脱退して以降、学外党派の介入を拒絶しています。この方針は本会の最高法規である「東京大学教養学部学生自治会規約」にも明記されています。SNS上には、あたかも本会の活動が一部の学生の偏向した意見に基づくかのような記述も散見されます。本会は民主的制度に裏付けられた前期課程生の代表性を有するだけでなく、学生投票や全学一斉アンケート(いずれも2000人を超える学生の意見を収集)などを通して直接的な意見集約に努めています。今後も本会の活動にご理解をいただけると幸いです。

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